About Leather

元厚(げんあつ)の革への挑戦

流通する革製品のほとんどは、革を薄く漉いています。
革は漉かないと、へり返しやステッチなどが難しくなります。厚さにばらつきがあり、製品を均一に作ることも難しくなります。薄い革を表裏張り合わせることを上質だと捉えるのが、革業界の常識でもあります。
SYRINXの製品は、できるだけ革は漉かずに元厚(げんあつ)のまま利用しています。何故元厚にこだわるのか?

まず、エルバマットの床面は、オイルが染み込み、しっとり実に美しい。革を実際に見れば漉いてしまうのがもったいなくなります。

次に、ヴァケッタレザーの特徴は繊維の奥にまで、タンニンとオイルが浸透していること。使用するに従い、内部のオイルは表面へと出て、次第に艶々の表情に変わります。薄く漉いてしまえば、特徴である油脂分を捨てることになってしまいます。

最後に、植物タンニン鞣の革はクロム鞣に比べると弱いこと。薄く漉かれた植物タンニン鞣の革は、両側から強く引っ張ると破れるほど脆くなります。末長く使用するには厚さは必要です。

しかし、厚さにばらつきのある元厚で、精度が必要な製品をデザインすることは難しい作業です。 
要素を削ぎ落とし、単純なものでないと、嵩張って成立しません。要素が少なくなれば、それぞれの要素が複数の意味を持たないと、機能が成立しません。
俳句、華道、茶道、禅など、研ぎ澄まされたミニマルさは、日本人ならでは美意識です。
SYRINXの製品には、日本の美を体現し、削ぎ落とされた無駄のない要素で、豊かな機能を実現します。

Tempesti Elbamatt(エルバマット)

エルバマット

9世紀初頭からイタリア・トスカーナ地方に伝わる「ヴァケッタ製法」。その伝統を今なお守り続けるテンペスティー社のエルバマット・レザーは、自然の樹木のタンニンでなめし、じっくりとオイルを染み込ませた革です。ヴァケッタレザーは、加脂工程に牛脂を用い、水分を一切使用しないことが最大の特徴で、独特のしなやかさがあります。牛脂は革に浸透しにくく、繊維の奥まで染み込ませるのに時間がかかります。しかし、一度浸透すると抜けにくく、ほぼ永久に潤いと艶のある革質を味わえます。そして、牛脂と魚脂を配合し、より多くのオイルを革に染み込ませるのがTempestiの特許技術、エルバマット製法です。
エルバマット は、北欧諸国の寒冷地で育った、きめの細かい最高級の牛原皮の中でも最高級とされる胴部分(ベンズ)のみを贅沢に使用しています。
通常の2倍のオイルを浸透させたエルバマットは、吸い付くような滑らかさで、見事なまでに美しく色艶が深まり、数あるイタリアンレザーの中でも際立つ存在です。
「イタリア植物タンニン鞣し革協会」に加盟しています。

深まる色艶・エイジング

エルバマットのエイジング

エルバマットの鮮やかで透明感のある色付けは、染料のみで行われます。傷やシミは、型押しや顔料で隠さないので、そのまま残ります。しかし、原皮の風合いをそのまま味わえるのは、最高品質の天然の革である証です。傷やシミも唯一無二の個性として、受け入れていただけますようお願い致します。
染料で仕上げた革は、使い込むほど色が深まり、エイジングを堪能できます。 エイジングに関しては、ヴァケッタレザーの右に出る革は存在しません。中でもオイルをたっぷり含むエルバマットのエイジングは美しく、短い時間で色艶が深まります。
イタリアでは革らしい自然な風合いが好まれ、エイジングを楽しむ文化が息づいています。エルバマットは、イタリアの革文化を継承し、その魅力を堪能できる数少ないイタリアンレザーの1つです。
共に成長していく革なので、入学や進級、就職など新たな門出へのプレゼントにも最適です。

Liscio のエイジングの例

エルバマット の標準的な仕上は、イタリア語で「滑らか」という意味の「リスシオ(Liscio)」というシリーズです。その名の通り、滑らかで、吸い付くような質感。原皮の表情がわかる透明感があり、色艶の深まりが素晴らしく、エルバマットのベーシックなテクスチャーです。

Cammello
Fragola
Piombo
Lattuga
agave
Nero

Cammello(らくだ):定番のカラー。次第に美しい飴色に。

Fragola(イチゴ):鮮やかな朱色から、深いレンガ色に。

Piombo(鉛):グレーブラウンから彩度を抑えた深い焦げ茶へ

Lattuga(レタス):綺麗な若葉色から、深い艶とともにオリーブ色に。

Agave(アガベ):青緑色が次第に濃く。

Nero(黒):マットな表情から次第に艶のある黒に。

Texas のエイジングの例

アメリカ・テキサスの乾いた荒野を連想させる「テキサス(Texas)」シリーズもあります。銀面(表側)を起毛させたオイルヌバックで、床面を起毛させたスエードより丈夫で末長く使用できます。ビロードのように柔らかくサラサラとした触り心地が特徴で、オイルも多く含むので、非常に早くエイジングが進行します。使うほどに起毛が落ち着き、艶が増し、色が深まります。

Texas Agave
Texas Piombo
Texas Viola
Texas Giallo

Texas Agave(テキサス アガヴェ):浅い海から深海のように。

Texas Piombo(テキサス 鉛):グレージュから彩度を抑えた深い焦げ茶へ。

Texas Viola(テキサス スミレ):鮮やか藤色から深い紫に。

Texas Giallo(テキサス 黄色):鮮やか黄色から琥珀色に。

ナチュラルマークについて

牧場では牛がストレス無く健康に育つ様に放牧飼育されています。革にはその牛が『生きた証(ナチュラルマーク)』が刻まれています。
・キズ:元々持っていた皮膚の傷痕、かき傷や斑点など。
・色むら:繊維の密度や厚さが違い。ロットや部位により発生します。
・血筋:すぐ下にあった血管の痕が濃くなる筋模様。
・トラ:首付近など元々あるシワが寄りやすい部位の筋状の縞模様
通常は、これらは、型押しや顔料により隠されることが多いのですが、その場合、革本来の風合いは損なわれてしまいます。
エルバマットのように素地を活かした仕上げは、ナチュラルマークがある場合もありますが、良質な天然皮革の証といえます。
唯一無二の個性としてご了解いただけますようお願い致します。

cammello t-guingla cammello lattuga

(順に キズ・色ムラ・血筋・シワ)

オイルケアが不要

エルバマットの製造過程

一般的な革は、表面に最初から艶があると思います。それは、革の最終工程で表面にオイルを塗って仕上げているからです。しかし、表面のオイルは、経年変化で揮発し、光沢を失い、カサカサになります。それが定期的なオイルケアが不可欠な理由です。
一方、エルバマットは、その名の通り、最初は艶のないマットな表情です。これは、オイルを表面に塗らなくても、通常の1.5~2倍(原皮の約20%)のオイルを加える特許製法で、 繊維の中までたっぷりオイルが染み込み、革が乾燥しないからです。 使い込むほど、内側に含まれるオイルが気孔部分から染み出して表皮をコーティングし艶が出ます。防水効果も高まります。
ここに既成の皮革用オイルを加えると気孔が詰まり呼吸困難になり革が早く老化する事に繋がります。そのため、エルバマットにはオイルケアは不要です。防水スプレー、その他コーティングしてしまうようなものも禁物です。革が呼吸できず硬化します。
何もせず、よく使い革に適度な刺激を与えること、それが一番のメンテナンスです。
コーティングしないので表面は柔らかく傷つきやすいですが、多少の傷は指で擦れば自然に回復します。深い傷も、エイジングとともに馴染み、革の風合いへと変化していきます。
時間と手間がかかるため、現在ではヴァケッタレザーを生産するメーカーは僅かです。革大国イタリアの中でも、エルバマットは、革本来の味わいと扱いやすさを兼ね備えた希少な存在です。

La Perla Azzurra Alaska(アラスカ)

アラスカ

La Perla Azzurra(ラ・ペルラ・アッズーラ)社は、植物タンニンなめしの生誕地と言われるイタリアトスカーナ地方、サンタクローチェで1967年に創業。以来フランス産の厚みある良質な原皮と、徹底的にこだわり抜いたアルゼンチン産のケプラチョタンニンを使用し、最高級のイタリアンレザーを作り続けている老舗タンナーです。
アラスカは、表面をワックスがけし、さらにドラムに入れて、シボ感を出しています。その表情は、まるで白銀のアラスカの氷の大地。ワイルドな自然なシボが魅力です。
使うほどに表面のロウが擦れて消えていきます。まるで白い雪から自然が顔をのぞかせ始めた春のアラスカのように、革本来の表情があらわれます。
表面のワックスと自然なシボにより、エルバマットに比べ傷がつきにくいのが特徴です。
色艶が深まり、エイジングの醍醐味も堪能できます。
「イタリア植物タンニン鞣し革協会」に加盟しています。

アラスカ のエイジングの例

アラスカ birch
アラスカ cammello
アラスカ grafite

Birch(樺):柔らかなベージュを覆うロウが白樺の樹皮を連想させる。

Cammello(らくだ):定番のカラー。シボに残るロウが取れ、次第に飴色に変化します。

Grafite(黒鉛):明るいグレーのカラーの下から、黒鉛のようなダークグレーがあらわれる。

アラスカ の個性

アラスカは、傷やシミだけでなく、大きなシボ、小さなシボ、シボがほとんどないなど、表情にばらつきがあります。一つとして同じものがない個性としてご了解いただけますようお願い致します。

アラスカ birch アラスカ birch アラスカ birch

Birch(順に シボほぼなし・色ムラ・シボ大)

アラスカ cammello アラスカ cammello アラスカ cammello

Cammello(順に シボ小とキズ・シボ中・シボ大)

アラスカ grafite アラスカ grafite アラスカ grafite

Grafite(順に シボほぼなし・シボ中とキズ・シボ大と血筋)

環境への配慮

イタリア植物タンニン鞣し革協会のロゴ
イタリア植物タンニン鞣し革協会の認定書

「イタリア植物タンニンなめし革協会」は、何世紀にもわたる植物タンニンなめしの伝統を守り、原材料と技術の安全と品質を保証し、植物タンニンなめしの革の普及のために1994年に発足しました。イタリアに1300あるといわれるタンナーのうち、厳格な審査基準を満たす22社のみが加盟しています。

「イタリア植物タンニン鞣し革協会」に加盟するタンナーは、サスティナブルな環境を構築するために、その生産サイクルにも細心の注意を払っています。

  • 使用する原皮は食肉加工の過程の副生産物を使用。 皮のために牛を殺すことはありません。革利用しなければ、深刻な皮の廃棄問題を引き起こす可能性があります。
  • 生皮から取り除かれた毛は、農業用肥料へとリサイクルされます。
  • 浄化プラントに溜まる沈殿物は、煉瓦を製造するために建設分野で再利用されます 。
  • 人間だけでなく環境にも有害な、アゾ染料(合成染料)、ニッケルまたはペンタクロロフェノール、クロムVIなどの毒性物質は一切含まれておらず、金属アレルギーに苦しんでいる人も安心して使用できます。
  • クロム鞣の革は燃焼により発がん物質を生成しますが、植物タンニン鞣しされた革は、その自然由来の特性により、容易に処分できます。

SYRINX製品には、その品質と環境配慮の証として「イタリア植物タンニン鞣し革協会」発行の品質証明書が付属します。

ロゴマークの手のイメージは、なめし職人の技と誇りを連想させます。

植物タンニン鞣とクロム鞣

革を柔らかくすると書いて鞣(なめし)と読みますが、読んで字の如く、「皮」を変質させ、「革」にする工程です。鞣しには、クロム鞣と植物タンニン鞣の2つがあり、SYRINXは植物タンニン鞣の革を使用しています。

クロム鞣は、100年ほど前にドイツで開発されました。塩基性硫酸クロムという化学薬品を使用します。
クロム鞣の特徴は、軽量で丈夫で水にも強いこと。しかし、金属を含むので、クロム鞣の革は金属アレルギーの原因となります。さらに、クロム鞣の革を焼却すると一部が有害な6価クロムに変化することが認められており、その毒性や発癌性から環境に与える影響が大きく、環境汚染の可能性があります。
また、植物タンニン鞣のようなエイジングは楽しめません。
丈夫な上に、短時間で安価に製造でき、大量生産可能で、トップブランドを含め、現在流通しているほとんどの革製品はクロム鞣です。

一方、植物タンニン鞣の歴史は、先史時代にまで遡ります。人類が皮を利用し始めた頃、たくさんの落ち葉が入った水溜りに漬かっていた動物の死骸は、肉は腐っていたが、皮は腐っていなかった。落ち葉や木切れからタンニンが水に溶け出し、一種の植物タンニン鞣が行われたと考えられ、これが起源と言われています。何世紀もの間、トスカーナの革職人はそのレシピと高度な技術を研究・継承させてきました。
現在では、安価で丈夫なクロム鞣に押され、手間のかかる植物タンニンなめし革を生産するタンナーは希少になりました。しかし、クロムの環境問題から、植物由来の原料のみ使用する植物タンニン鞣が、近年再注目されています。

その特徴は、「生きていること」と言えるかもしれません。使用に伴いタンニン成分の作用でエイジングし、次第に温かみのある色調を帯びます。エイジングしないクロム鞣の革は、イミテーションの人工皮革との見分けが難しくなりましたが、植物タンニン鞣の革はイミテーションできず、本物志向としても注目されています。
ちなみにタンニンはポリフェノールとも呼ばれ、赤ワインや緑茶などにも含まれ、抗酸化作用や抗菌作用、防虫作用があります。