記事: ふたつの筒
ふたつの筒
過剰さへの違和感
SYRINXが長らく採用する化粧箱+スリーブの組み合わせ。どこでも見かける、一般的な形です。しかし、ずっと違和感を抱えていました。
化粧箱は嵩張るほど、要素が多いほど、保管スペースやコストの負担が大きくなる。
なにより、化粧箱単体では足りない機能を補うためにスリーブを足す。
これはSYRINXの目指すミニマルさとは、方向性が異なります。
「もっとSYRINXらしい解はないだろうか」
この違和感に、ようやく答えを見つけることができました。
箱であることの否定
数々の違和感を辿っていくと、一つの問いに行き着きました。
「箱である必要はあるのか」
そこから、新しいパッケージの思考が始まりました。
既成概念の内側にいれば、その問い自体が浮かびません。
しかしSYRINXのフィロソフィーは「思考のカタチ」。当たり前と感じることを深く検証し直す。
そうして数々の新しいデザインを生み出してきました。
不安定なふたつ
この問いから閃いたのが、スリーブを2つ組み合わせること。
それぞれ単体では、容易に変形する不完全な形。
しかし内箱に収納物がぴたりと収まり、さらに内箱が外箱の変形を拘束することで、形が定まります。
単体では不安定なふたつが、組み合わさることで安定する。限られた要素が互いに支え合うことで、機能を成立させる構造です。
その結果、余白がなくなり、収納物とほぼ同じ大きさの小さく薄い箱になりました。
普通の箱は、箱が主体です。中身は、保護される対象として存在します。
この新しい箱は違います。中身もまた、箱を成立させる構造として機能します。
そして、開閉する所作そのものも、従来の箱とは少し異なる体験になります。
この発想は、カードそのものを留め具として利用する「インナーフック」にも通じます。
問いが変われば、形が変わる
「箱の定義まで問い直す」
そこから始めれば、答えは変わります。
当たり前だと思っていることまで丁寧に問い直し、論理的な思考を重ねる。
箱一つにも、思考を重ねた先にしか見えない形があると信じて。
(文・佐藤 宏尚|SYRINX代表・デザイナー)
※ この化粧箱は、意匠登録出願中です
※ 既存の化粧箱の在庫がなくなり次第、順次この化粧箱に切り替えます
