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記事: なぜ Hitoe® L-zip L の底部は 10mm なのか

Design Journal

なぜ Hitoe® L-zip L の底部は 10mm なのか

なぜ Hitoe® L-zip L の底部は 10mm なのか

Hitoe® L-zip L の底部厚 10mm。
それは、単に「薄く見えるように設計した」わけではありません。
構造上もっとも合理的で、美しいバランスを持つ必然の値です。

「薄い財布」を定義し直す

薄さだけを追求するのは簡単です。
薄い革を使い、収納できるカード枚数を減らせば、誰にでも「薄い財布」はつくれます。
しかし、私たちが目指すのは、単なる薄さではなく、愛用品としての質感と実用性を兼ね備えた薄さです。

カードが6枚以下であれば、紙幣に折り目がつかず、金具を使用しないHitoe® Foldが携帯性・利便性ともに優れています。
そのため、Hitoe® L-zip Lの厚さの基準は、カード7枚を想定。
その際に最も美しく、最も合理的な寸法を、構造から導きました。

カード7〜8枚収納時の最大厚、10mm

Hitoe® L-zip L は、カードポケットが2箇所ある「ダブルカードポケット」構造。
カード7枚収納時なら、片側の最大枚数は4枚です。
そのときの標準的な厚みを積み上げると、次の通りです。

  • カード 4 枚:0.76 mm × 4 = 3.04 mm
  • 革の重なり(外装+内装)合計:5.8 mm
  • 紙幣・レシート 10 枚:0.10 mm × 10 = 1.00 mm

合計:3.04 + 5.8 + 1.0 = 9.84 mm ≒ 10 mm

つまり、カード7〜8枚を収納したときの最大厚みが約10mm。
これが、Hitoe® L-zip L の底部寸法の基準です。

カード16枚収納時の最小厚、10mm

では、この10mmの中に最大で何枚のカードが入るのか。
カードを詰めると、紙幣は底まで届きません。また、底部付近には内部パーツもありません。
つまり、底部に存在するのはカードと外装のみ。

  • 底部における革の重なり:4 mm
  • 残りの許容厚:10 mm − 4 mm = 6 mm
  • カード1枚の厚み:0.76 mm
  • 6 ÷ 0.76 ≒ 8 枚(片側)→ 合計 16 枚

カードを8枚ずつ、合計16枚まで、 底部の厚み10mmで収納することができます。

10mmという均衡点

カード8枚までなら「収納しても約10mm」を維持し、最大枚数(16枚)でもシルエットが崩れない。
10mmという数字は、単なる寸法ではなく、構造的な必然と造形的な美しさが交わる均衡点です。

一つ一つの寸法さえも、感覚ではなく、深い洞察と論理的な思考から導かれた意味を持つ。
この10mmという数字は、SYRINXが追い求める「機能としての美しさ」を象徴しています。

(文・佐藤 宏尚|SYRINX代表・デザイナー)

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Hitoe® L-zip Lの進化 – 薄い長財布のパイオニア
Column

Hitoe® L-zip Lの進化 – 薄い長財布のパイオニア

Hitoe® L-zip L は、2018年の誕生以来、常に「薄さ」と「使いやすさ」の両立を追求しながら進化を重ねてきました。 2025年、「収納しても薄い長財布」という原点を超え、薄さと美しさの到達点へ。7年にわたる挑戦の軌跡と、その革新的な進化をご紹介します。

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