頼りないカタチ
きっかけは一つの問い
「コインポケットを、どう閉じるか。あるいは、どう仕切るか。」
普段は目立たないパーツでありながら、財布のデザインを考えるうえで避けては通れない課題です。
ファスナー、ホック、深いフラップ。
確実に閉じることはできます。しかし、その代わり、操作が増え、厚みが生まれます。
もっとシンプルで、もっと機能的な形はないだろうか。
その問いから、ショートフラップは生まれました。
ショートフラップという答え
辿り着いたのは、開口部を塞ぐか塞がないか曖昧な、小さく、頼りない存在。
しかし、この短いフラップは、単なる「蓋」ではありません。
|コインを落とさないために
コインポケット上部の小さな革片。
実は硬貨の落下を防ぐには、これで十分です。
財布を使い込むほど自然なカーブ形状になり、さらに安心感が増していきます。
また、硬貨の上部にしか被らないため、全体の厚みにも、ほとんど影響しません。
|視認性を妨げない
多くのコインポケットは、しっかりとした蓋を開かなければ中身が見えません。
その小さな一手間が、硬貨を日常的に使ううえでの障害になります。
ショートフラップは覆いすぎません。
意識せず、自然に硬貨を確認できます。
|紙幣を守るために
紙幣はコインと接すれば汚れやすく、カードと接すれば折り目がつきやすくなります。
ショートフラップは、それらから紙幣を守ります。
また、コインポケットから継ぎ目なく連続した一体のパーツであることにも理由があります。
それは、ポケットで圧迫されても、紙幣に余分な折り目や型をつけないためです。
ショートフラップは、単なる蓋ではありません。
紙幣を守るための仕切りでもあるのです。
思考の積み重ね
コインを落とさない。
視認性を妨げない。
紙幣を守る。
これだけの要件を、頼りない小さなパーツで満たす。
Hitoe® Fold登場以前、このショートフラップを設けた財布を、私は見たことがありません。
コインポケットは、確実に閉じることが前提だったから。
その前提に、おそらく問い自体が存在しなかった。
あたりまえだと思うことに対しても、深く問い直す。
別の答えが、そこにあるかもしれない。
細部に至るまで、思考を積み重ねる。
それが、SYRINXの思考のカタチです。
(文・佐藤 宏尚|SYRINX代表・デザイナー)
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