小さい薄い長財布の先駆者 Hitoe® L-zip L
キャッシュレスが進んだ今でも、長財布を好む方は少なくありません。
お札を折らずに収納できることや、レシートやチケットを整理しやすいこと、取り出す所作の美しさなど、二つ折り財布にはない魅力があるからです。
一方で、時代に合わせて「コンパクト長財布」「小さい長財布」と呼ばれる財布も数多く登場してきました。
しかし、そのほとんどは、従来の長財布を一万円札のサイズに限りなく近づけただけの設計にとどまっています。
ここでは、「小さい長財布」が抱える構造的な課題と、そこから生まれたSYRINXの理想「小さい薄い長財布」についてお話しします。
「小さい長財布」が抱える構造的な問題
現在主流の「小さい長財布」は、多くが一万円札の大きさに限りなく近づける発想でつくられています。
一見、無駄なく理想的に見えますが、この構造にはいくつかのジレンマがあります。
まず、高さが1万円サイズでは、硬貨とカードが重なることを避けるのは困難で、収納時に厚みが増します。
(カード54mm + 500円玉26.5mm > 1万円札76mm)
さらに問題はカード同士の配置です。
一見、「カードを左右に分散させれば、厚みも分散できるのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、一万円札の中でカードの位置を動かしてみると、そう簡単ではないことが分かります。
下の図の赤く濃く塗られた中央の帯は、カードをどこに置いても必ず覆われる領域を示しています。
中央の濃い赤い帯は、すべてのカードが必ず覆う領域となる
言い換えると、一万円札サイズの長財布である限り、この中央部には、すべてのカードが必ず重なります。つまり「小さい長財布」は、厚くなることを根本的に避けることができないのです。
その結果、現実的に収納できるカード枚数は数枚に限られます。
カード数枚であれば、わざわざ長財布にこだわる必要はありません。
Hitoe® Fold に代表される二つ折り財布の方が、携帯性・利便性ともに優れています。
そのためSYRINXは、「一万円札サイズの小さい長財布」は目指さず、「長財布はどうあるべきか」を根本から考え直しました。
長財布を再発明「小さい薄い長財布」
SYRINXがたどり着いた理想は、ただ外寸だけを縮めるのではなく、長財布に相応しい収納力を維持したまま、厚みを大幅に抑えた「小さい薄い長財布」でした。
その実現のために2019年に考案したのが、カードをL字型に二箇所に分け、厚さを半減させる「ダブルカードポケット(登録意匠)」という構造です。
言い換えれば、同じ厚みで約2倍のカード収納力を備えた構造ともいえます。
すべてのカードが中央で重なり、厚みが集中する
カードを左右2箇所に分散させ、重なりを半減させる構造
収納してもわずか10mm
ダブルカードポケットの効果により Hitoe® L-zip L は、
[カード8枚・紙幣10枚・硬貨10枚]を収納しても厚さはわずか10mm。
カードを16枚まで増やしても13mm。
底部は常に10mmのまま、圧倒的な薄さを実現しました。
最大13mm(底部10mm)
市場に広がり始めた、新たな系譜
2019年からダブルカードポケットを備えた Hitoe® L-zip L が大きな反響をいただき、同様の考え方を採り入れた長財布が、2025年から市場に登場しはじめました。
多くの製品は、SYRINXの知的財産権への配慮から、コインポケットをカードの上部ではなく下部に配置するなど、変更が加えられています。
いずれにしても、小さい長財布の世界でも、ダブルカードポケットに影響を受けた「小さい薄い長財布」という新たな系譜が広がろうとしています。
「小さい薄い」の二つの原点
Hitoe® Fold は、二つ折り財布の世界で「小さい薄い財布」という新たな領域を創り出しました。
Hitoe® L-zip L は、長財布の世界でも「小さい薄い長財布」という新たな領域の原点となりました。
感覚ではなく論理的な思考を重ね、その結果として既成概念を超える。
「小さい薄い財布」「小さい薄い長財布」は、そうした思考からSYRINXが生み出した新領域です。
(文・佐藤 宏尚|SYRINX代表・デザイナー)
![Slim wallets and mini wallets [31 international design awards] Make cashless payments smart | SYRINX](http://syrinx.audio/cdn/shop/files/new-logo_b8707449-3209-4928-81a5-7e8f1421c927.png?v=1723177999&width=1200)


