SYRINX

Story 01

レザーエンクロージャー

きっかけ

「なぜ建築家がオーディオを?」
良く受ける質問です。
SYRINXのスピーカー開発は、自宅を設計中に、音質・デザインで満足できるスピーカーが見つからなかったことがきっかけでした。
なら自分で作ろう、と試行錯誤するうち出会ったのが、エンサウンドの菅順一氏が提唱されたソフトエンクロージャーでした。早速試作し、従来の前から力強く迫る音とは性質の異なる解像感と漂うような立体感あふれる音を体験し、衝撃を受けました。透明感のある音が、楽器と同じように、あらゆる方向に広がり、空間全体が生演奏のような臨場感あふれる音で満たされます。

建築の知識を活かす

ソフトエンクロージャーの特徴は、柔軟な吸音材で出来ていて共振、残響がない事です。しかし、低音が弱い。そして、試行錯誤を繰り返すうちに気付きました。エンクロージャー内部の音は、スピーカーユニットの音と打ち消しあう逆相の音で満たされています。そして、吸音性が高い素材は、軽く柔らかく、音を透過させやすい性質があります。特に低音は透過しやすく、低音の量感を大きく損なう原因となっているのだと。
そこで建築家としての知識を活かして閃きます。建築の防音室は、まず遮音材で部屋を密閉して音を閉じ込め、音が吸音材内部を反復することで効果を高めます。柔軟で共振、残響が少なく、さらに遮音性も高い素材でエンクロージャーを作ることが出来れば理想です。

一般的に遮音のためには重さが必要です。そして、重い素材は固いものが多く、これまでエンクロージャーにはハードウッドや金属、樹脂が使用されてきました。しかし、固い素材ほど共振や残響の影響は除去するのが困難になります。エンクロージャーは、スピーカーユニットの何十倍も面積があり、わずかな共振や残響が付帯音(ノイズ)となり音を濁します。また固いと内部の音圧の逃げ場がなくなり、スピーカーユニットの応答性が悪化します。

よく「楽器のように本体が響く」ことをセールスポイントにしたスピーカーがあります。しかし、本来、スピーカー本体の共振や残響は、不要な付帯音でしかありません。
SYRINXが目指すのは、本体が楽器のように響くことでなく、「音源に忠実な繊細な音が、楽器のように自然に空間に広がること」なのです。

革へのこだわり

 ELBAMATT

Tempesti

テンペスティはイタリアのトスカーナ地方、植物タンニンなめしの生誕地と言われるフィレンツェ・サンタクローチェ地区にあります。代々伝統的ななめし製法を引き継いできました。
テンペスティは、イタリア・トスカーナに存在する約570社の革メーカーの内、厳格な基準をクリアした24社のみが加盟する「イタリア植物タンニン鞣し革協会」に加盟し、長年に渡り数々のラグジュアリーブランドへレザーを提供しています。
エルバマットの説明

遮音性が高く、かつ共振、残響をなくすには、「柔らかさ」と「重たさ」、この矛盾する2つの要素をあわせ持つこと必要です。
その相反する性質を満たす理想の素材として着目したのが革でした。
革は特定の周波数での共振がなく、振動の減衰も早い(インパルス応答性が良い)ので残響が残りません。繊維が密に絡み合い音の内部損失も大きく、エンクロージャーに理想の素材です。

しかし、革でも、柔らかいものは軽く、重いものは固くなります。そのため国内外の数多くの革を吟味し、音に理想的な革を探し求めました。
そして巡り合ったのが、オイルをたっぷり含み、柔らかさと重さを合わせもつ、イタリアの伝統的な製法で作られるヴァケッタレザーでした。

中でも、テンペスティ社のエルバマットは、通常の1.5~2倍(原皮の約20%)のオイルを加える特許製法で、 オイルがたっぷり染み込み、比類のない柔らかさと重さを兼ね備えた類まれな存在です。

こうして共振、残響、音漏れを極限まで抑えた夢のエンクロージャー「レザーエンクロージャー」が誕生しました。

Story 02 「テンションアンカー 」

Story 02

テンションアンカー

独自のフローティングマウント(特許取得済)

エンクロージャーの次に注目したのが、内部構造です。
最初の試作はスピーカーをエンクロージャーに載せただけでした。しかし、これでは内部の逆相の音が盛大に外に漏れます。そのため回折しやすい低音ほど量感が損われてしまいます。
この対策として、スピーカーユニットに錘りをつけ、その重量でスピーカーユニットを圧着する方法を試しました。エンクロージャーとの振動絶縁、内部の音漏れ防止、微振動を抑えスピーカーユニットの応答性を高める、などの効果が見込めます。しかし、重量が重くなり、スピーカーが転倒した際には、錘によりスピーカーが破損するリスクが高くなります。

そこで閃いたのが、錘りでなく、バネやゴムによる引張力(テンション)でスピーカーユニットをフローティングマウントする方法です。
テンション材は軽く、細いので、音波の振動を妨げず、転倒時にスピーカーに過度の力が加わることもありません。重力を利用しないので、鉛直方向だけでなく、あらゆる方向で利用できます。そして、錘りと同様エンクロージャーと振動絶縁でき、内部の音漏れを防ぎ、ユニットの応答性も高まります。この技術「テンションアンカー」は特許取得しました。

音と空間の調和

このユニークなスピーカーは、これまでの常識に捉われずロジカルな仮定と検証を追求し、辿りついた解答です。これは建築の設計と同様のプロセスです。
こうして、空間全体が音で満たされる「SYRINX」が誕生しました。
従来の前から迫る音は、特定のリスニングポイントに座って映画を見たり、音楽鑑賞するには最高です。しかし、BGMなど、空間全体を音で満たす用途には不向きです。
「SYRINX」は、空間と調和するスピーカーです。音源に忠実な繊細な音が、楽器のように自然に広がり、空間のどこで聞いても生演奏のような臨場感ある音を愉しめます。
是非多くの方に、これまでの概念を超越する音を体験して頂きたいと願っています。

Story 03 「そしてプロダクトへ 」

Story 03

そしてプロダクトへ

スピーカーからプロダクトへ

音に良い革を探し、巡り合ったTEMPESTI社のエルバマットですが、革大国イタリアの中でも、エイジングによる色艶が見事なまでに美しく、革本来の味わいと扱いやすさを兼ね備えた希少な存在です。
しかし、1枚の革からスピーカー分を切り出すと、端材が大量に発生します。この素晴らしい革を、端材として放置したままでは勿体ない。何か有効活用できないか。その想いから、プロダクト開発が始まりました。

本当の革の魅力を伝えたい

プロダクトの開発で大切にしているのは、建築と同じです。
「素材の魅力を引き出すこと。」
この革の一番の魅力は、密実でしっかりとしていながら、手に吸い付くようなしっとりとした柔らかさです。この魅力を損なわないために、革は漉かず、元厚のまま利用することを心がけています。
上質な革質で、シンプルかつユニークなデザインの製品を、リーズナブルな価格で提供し、本当の革の魅力を出来るだけ多くの方に伝えたいと考えています。

スピーカーから派生的に始まったSYRINXのレザープロダクトですが、多くの賞を受賞するなど、そのデザインや意義は社会的にも高く評価されています。